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当ブログは株式会社トミーウォーカーの運営する『サイキックアーツ』の参加キャラによるブログです。
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深夜。
港が近い倉庫街の奥からは、何時もの甲高いスチール音や笑い声は聞こえず。
並び立つコンテナにはその色よりも深い赤が散っていた。

「・・・知ってる事はそれだけか?」
「あ、あぁ。それ以上は知らねぇ・・・だから、だから助け――」


言葉は途中で事切れた。
続ける口を持たぬ体を片手に、返り血に濡れた口を歪める。

「ついに見つけたぞ・・・!待っていろ、天虎鋼拳の名を持つ者よ!」

周囲に転がる無言の骸の中に立つ男の笑い声だけが、倉庫街に響き続けた。




1時間後。
骸だけが残された場所に、複数の足音が響く。
辿り着いた者達からは、呻く声や短い悲鳴が漏れた。

「遅かったか・・・!」

歯噛みするその声はまだ若い。



翌日、現場は大量殺人事件として報道された。


「それじゃぁ良輔!後でな!」
「おぅ!着替えたらすぐ遊びに行くぜ!」

友人と別れ、何時もの道を家へと急ぐ。


季節は冬。
都内でも例年にない寒さと報道される日々が続き、降る事さえ稀な雪がチラつく日も少なくない。

昨日も大雪が降った為に、路肩には未だ晴れた日差しでも溶けきらなかった雪が残っている。



「ただいまー!」

古いアパートの2階。持っている鍵を使い、自宅へと入る。
学校からも歩いて30分とやや遠い環境だが、それが苦になるのはせいぜい雨の日ぐらいだろう。
途中でスリや恐喝に合う事も深夜でさえなければまず無く、海外で過ごしていた日常に比べれば随分と平和ボケしてしまうようなところだ。
部屋や建物も古くはあるが、住んで1年も経てば愛着すら湧くというもの。

部屋に鞄を置いて着替えリビングに向うと、そこに居た人影が振り返った。

「おかえり」
「あれ?珍しいな親父、家に居たのか」

遺伝なのか、既に175を超え180に迫ろうとしている自分とほぼ同じくらいの背丈。
三十歳も半ばを過ぎようとしているが、まだまだ若く鍛え抜かれた肉体。
そして此方は間違いなく遺伝だろうと思わせる、灰色の髪。
それは佐藤良輔の父親、佐藤大輔だった。

「ああ、また夕方には出掛けるが」
「そっか、俺もこれから友達んとこ出掛けてくるよ。親父夜遅くなるよな?」
「恐らくな」
「なら、友達んとこでメシご馳走になってくるか、外で済ませてくるよ」
「迷惑は掛けんようにな」
「分かってる!んじゃ行ってくるよ!」

そのまま外へ向おうと背を向けたところで「良輔」と呼び止められる。

「・・・お前、最近周囲で変わった事はないか?」
「変わった事?いや・・・ねぇと思う」
振り返り、父から掛けられた言葉に記憶を手繰るが、やがて首を振った。

「そうか、なら良い。気をつけて行って来い」
「おう」

そうして今度こそ、外へ出て友人の家へと向った。




家には、母は居ない。物心付く頃には父と2人だけで、母の所在を教えてもらった事はない。
正確には、余り気にした事がなかった。幼少の頃には母はどこかと尋ねた事もあったらしいが、記憶にはなくまたそれに対する答えも覚えていない。今更、突っ込んで聞こうとも余り思っていない。
外見その他からして、自分は養子などではなく実の息子なのだろうとは思っているが、それすらも確認した事は無かった。

世間一般からすれば、そうした部分は気になるところなのだとも思う。
だが、ずっと父と2人で過ごしてきたのが日常となっている自分にとっては今の状態が普通だった。

今日のように友人の家に遊びに行けば、そこでは友人の母も居て出迎えてくれたりもする。
時に食事もご馳走になる時を思えば、それが無い事で羨ましいと思う事はあるがそれだけだ。

何より、そんな日常を目にするようになったのは日本で過ごすようになってから。
上海やイギリス、ニューヨークなどに居た時は親も居ないスラム育ちの同年代とて普通だった。


だから最近、夕飯をよくご馳走してくれる友人の家に放課後遊びに行くのは、友人とも仲が良いのは勿論だったが外食やコンビニの食事とも違う美味しい夕食にありつけるからなどという、下心も僅かに含まれて。

今日は何をして遊ぶか。
流行のゲームか、公園でバスケットやサッカーか。マンガを読み合うのも悪くない。


「・・・そういや、今日はやけに人がいねぇな」

友人の家まで後少し。
住宅街を歩く自分の周囲は無人だった。

いつもならば、夕方のこの時間はスーパーへ買物に出てくる主婦や自分と同じく放課後の時間を楽しもうとする学生などと、少なからずすれ違う。




『・・・お前が佐藤大輔の息子か?』

だからこそ。
初見なのに名指しで自らを呼ぶ、道の先に立つ男に無条件で警戒度は最高値に達した。


―To Be continude
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