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当ブログは株式会社トミーウォーカーの運営する『サイキックアーツ』の参加キャラによるブログです。
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―――“闇堕ち”


人の心の奥底に眠る、もう1人の自分。
それは、ダークネスと呼ばれる邪悪な別人格であり。

ヒトの精神が大きく揺らぐ事でその宿主の人格を破り、その支配権を得て表に現れる。
強大なチカラ、特別な能力を宿して。

良輔は灼滅者ではなかった。
先のアンブレイカブルとの対峙の折、内に在ったダークネスは宿主の体を手に入れる機会を見つけたと同時に自らがそれを得る前に壊させない為、良輔に呼びかけつつも敢えて強硬な支配権獲得をせず力だけを与えた。

まだ破壊し表に出るには精神は頑なだった故に。
そしてより脆くなるであろう可能性を見出していた為に。

父は駆けつけたその場の状況を見て、瞬時に判断した。
良輔が灼滅者に目覚めたか、闇堕ちの片鱗を見せつつある事を。




「・・・形勢逆転、か」

それぞれに身に受けた負傷はある。
だがそれぞれ共にまだ倒れるまでには至っていない、ヒトよりも強大なチカラを振りかざすダークネスが2人。


ぽつり、と呟いた。

『そうだ、お前とて人の親。子には早々手は上げれまい?』

アンブレイカブルが、口にする台詞とは対照的に顔を顰める。
それが気に入らない、顔がそう語っていた。


「・・・そしてお前は、“ヤツ”に俺の預かり知らぬところで接触していたのか」

問いには答えず、視線を隣に立つ息子の外見をしたダークネスへと告げる。
今度はダークネスがそれには答えず、薄く笑みを浮かべて見せた。


ダークネスのそれは二重人格のような性質だが、そのもう一つの人格が出てくるには酷く条件が限られる。そして、自分であればそのような兆候を見逃しはしない。
そう考えながらも、何かしらの手段を講じそしてそれは功を奏したのだろうと父は確信していた。


――紅き鬼紋を持つ“ヤツ”ならば。






通りの向こうから足音が響いてきたのはその時だった。
後ろを振り返った父が目にしたのは、数人の学生らしき一団だった。



「待て!」


目的はこの場に辿り着く事だったのか。
駆けて来た足は皆一様にして此処で止まる。


「ダークネス・・・その人をやらせるワケにはいかない!」
「それに闇堕ちしたその人もそのままには出来ません!」

口々に宣戦布告とも取れる台詞と共に、彼らが手にするのは日常生活では手にするはずもないだろう凶器、否、武具の数々。


そうか、と父は一人ごちる。
噂には聞いていたがこれが―――

「お前達が、サイキックアブソーバーの元に居る灼滅者か」

「何故それを!?」

学生の1人が驚いた顔で此方を見る。
その問いにはまたも答えず、目の前に立つ2人へと向き直る。

「問答の暇はない。手を貸せるならば、こいつを――息子を頼む」

学生達は尚も問おうとする口を噤み、父の言葉に頷けば自分を取り囲み始める。

「クククク、ようやくジユウになったんだぜェ?そう易々と返してやれるものか!」

8対1という、先ほどよりも更に人数差のある闘いが幕を開ける。


その一方で。


『ようやく、望みが果せるというものだ』

此方へ殺気を全開にするアンブレイカブルへ、拳を構える。

「お前の望みなど知らん。ただでは済まさんと言ったぞ」


『それで構わん。俺が望むのはただ、』

一歩を踏み出す。二歩目から全速へ。

『全力でお前と闘う事だけだッ!!』


繰り出されるジャブを弾く。
同時に弾いた手を取ろうとする逆手を、もう片手が叩き落とす。

足があがれば、同じように足をあげて膝をぶつけそれ以上の動きを封じ。

それが動きを変えて地へと踏み込むものとなれば、袈裟切りの手刀が迫る。

回避が間に合わず、肩へ食い込む一撃に顔を顰める。

だがそれ以上肉を裂く事は叶えさせず、下から掴み上げれば自らの後ろへと勢い良く引き体勢を崩させる。

よろけた足を即座に払い、最早前のめりに崩れんとする相手へ体を捻り回し蹴りを見舞った。

『ぐはっ・・・』


仰向けに倒れる身へ、飛び掛れば拳を突き落とす。
だがそれを素直に食らう事は待たず、その巨体は転がって間一髪で拳は地を抉った。

そこへ立ち上がりざまの下段の払い回し蹴りが迫れば、回避は間に合わないと読み片手を盾代わりにして体を庇い受ける。

「くっ」

そのまま耐えようとはせず、威力を殺すように転がりながら飛んだ。



「・・・時間を掛ける事は出来る。が、やはりそんな気分には成れんのでな。そろそろ終わりにさせてもらおう」

『出来るのならば、やってみろォォォオオオオ!』


立ち上がる父から発された一言に、相手は激昂しつつも更に速度を上げて一息すらつかせず間合いを詰める。


「――唸れ、銃爆拳」


右の拳が光ったと思えば、次の瞬間には殴りかかった相手の懐へそれがめり込んでいた。

相手の拳は、父の肩を掠めつつも当たる事はなく宙へと伸ばされたまま。


『く、ぐ・・・貴様、これ程の威力は・・・一体』

動く事すらままならないのか。視線だけを父に向け、問う。

「貴様にわざわざ教えてやる義理もない」

同時に、右拳に纏われたそれが再度唸りを上げる。

「・・・・・・だが冥土の土産だ、その目にしかと刻んで逝け」

立ち上がる白煙。まるでエンジン音のような唸り音は更に強くなり、

「Revolver Blast Fist―」

相手が力ずくで押されるように、踵を地に擦りつけながら後方へと押し出されていく。

『くっ・・・このオレがやすやすとやられてなるものか!』

咆哮を上げ、男は父へと拳を振り下ろそうとし。

「―Penetrationッ!!」

しかしそれより早く、父の拳は相手の男をそのまま貫いて吹き飛ばした。


派手に吹き飛んだ相手はしかし、ゆっくりと立ち上がる。

『これが、地だけではなく天をも喰らう虎の持つ、砕ける事を知らぬ鋼の・・・拳』

「そうだ。生憎だが、お前が砕ける側だったな」

静かに、だがハッキリと告げられた結果に相手は小さく笑った。

『・・・見事』

それを最後に、相手は事切れたように地へと崩れ落ちた。





相手の男は沈んだまま、立ち上がる気配はない。
父はそれを確認すると、此方へと歩み寄ってきた。その腕には、既に先ほどあった“何か”は無い。

「無事か、良輔」

「親父・・・ぐ、ああっ」

父の手に支えられ、倒れていた体を起こす。

自分は、駆けつけた8人によって倒されていた。
映る視界こそ自分も記憶にあるが、それ以外は全て則られていたように感覚がなかった。

だが倒された今、よく見れば、先まで自分を覆っていた煙のようなものも消えている。
同時に、体が思い出したように全身へとてつもない激痛が響き渡り始めた。

「早く病院に行かねばならんか・・・」


だがこれ程の重傷、大きな病院にでも行かねば対処は難しいかもしれない。
この近辺でそんな場所の宛てもなく、父が思案するように道の先を見つめていた時。



そこへ、自分達を倒した学生の一人が寄ってくる。

「無事に戻って良かった。手荒になってしまって、すみません」

それを聞けば、ゆっくりと頭を振る。

「・・・いや、そうでもなきゃ俺は二度と戻れなかった。ありがとう」

体は満足に動かなかったが、頭だけでもと礼をする。
彼はそのまま、父へと顔を向ける。

「しかし、僕らが何故灼滅者だと?」

父はそれにようやく答えを口にした。

「少しばかり、縁があってな。だが、丁度いい。誰か、治癒の技を覚えているものは居ないか。息子が重傷でな」

「それならアタシが!」

集団から一人進み出た少女が、此方へと駆け寄りその体へ手をかざす。
まるでファンタジーに出てくる魔法か何かのように、その周囲が光り暖かさが身を包む。

暫くすると、痛みが嘘のように小さくなっていた。

「これ、は・・・」

「アタシ達のせいもあるけど、その前に受けたダメージが凄く残ってる。随分と手酷くやられたのね・・・アタシの治癒でも限界があるわ、必ず病院でも治療を」

「すまん、助かった」

驚く自分に代わり、父が礼を述べる。
そこへ、集団からもう一人進み出てくると今一番の疑問を口にした。

「貴方も、灼滅者なんですか?」

「・・・」

2つ目の質問に、父は目を閉じ無言を貫く。
そのまま、彼らに背を向けてその場を後にしようとする。

「待ってくれ、貴方は一体――!」

「今は俺の事より、息子を何とかしたい。悪いが、失礼する」

再度投げかけようとする疑問を遮り、父はそのまま自分を連れてその場を去った。







後日。

あの時の治療が良かったのか、病院では決して軽い怪我ではなかったものの日常生活には支障無しとして診断された。
まだ包帯や薬の治療は残っているが、それもあと1週間ぐらいだろう。

そして、自分の手元には武蔵野学園というところから転入の誘いが届いた。
そこには、自ら相対したアンブレイカブルを含めたダークネスという存在。自らの目覚めた力もまた、アンブレイカブルに類しながらそれを乗り越えたもの―灼滅者―として、鍛えれば彼らと渡り合える力になること。
また、その為の養成機関でもあり学生の教え場となっているのが、先日会った彼らも所属しているという武蔵野学園である事などが記されていた。


父はその申し出を受けるように薦め、自分はそれを受入れた。

今まで居た学校の友人達などからは惜しまれたが、またこの先も起こり得る自体ならばとてもではないが巻き込めないのは明白だった。
何より彼らは、あの日亡くなった友人の事を気にしていなかった。
知られざる真実となってしまう事実、それが何よりもこのままでは居られないという気持ちを強く後押しした。

そして今日。
転入手続きも済み、これから通うキャンパスの前に自分の姿はあった。


「これがこれから通う学校か」

父はこの話が決まると同時に、暫く家に帰れないと告げて自分1人で生活するよう資金を預け家を出ていった。どうやら、あのアンブレイカブルにそもそも父という存在を教えた者を探すらしい。
結局、父が灼滅者と呼ばれる者なのか、またあの時の腕にあったものは何なのかは聞きそびれてしまっている。

だが

「俺が強くならねぇと、な。・・・もうあんな無様な負けも、御免だ」

何時か、あの時見た父のように。
その強さを。力を。


その拳を以って、“天虎鋼拳”の名を継ごうと。

新年を告げて暫く。
また1人、こうして灼滅者が武蔵野学園へと入学した。




―Fin
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